

「生成AIを導入したが、一部の社員が試して終わってしまった」。多くの企業からこうした声を耳にします。そんな中、熊本に本社を置く大手産業用機械メーカーの平田機工株式会社様は、生成AIを「一部の詳しい人の道具」ではなく「全社の仕事の進め方を変える基盤」として位置づけ、着実に活用を広げています。株式会社mimuは2026年6月から生成AI顧問として、毎週の定例会議で伴走支援をさせていただいています。本稿では、同社の取り組みから見えてきた「生成AIが組織に根づく進め方」を、支援者の視点でご紹介します。

平田機工様との定例は、資料を眺めて議論するだけの場ではありません。前週に出た課題に対して、mimuが「動くたたき台」、つまり実際に操作できる試作ツールや、実データを取り込んだ分析画面を持ち込み、現場のご担当者と一緒に触りながら「これは使える」「ここは実務と合わない」を確かめる場です。
生成AIの活用検討は、机上の企画書だけで進めると「できそう/できなさそう」の水掛け論になりがちです。動くものを前にすると、議論は一気に具体的になります。「まず小さく作って見せる。ダメなら次週作り直す」。このサイクルの速さこそ、生成AI時代のプロジェクトの進め方だと私たちは考えています。

同社の進め方で特徴的なのは、「AIで何かできないか」からではなく、「業務のどこに時間がかかっているのか」から始めている点です。各部門へのヒアリングは同社自身が実施し、集まった課題をmimuが分析して、効果の大きさとAI実装のしやすさで優先順位を整理する、という役割分担で進めています。
全体のボトルネックを外した部分最適のAI化は効果が出ない、という認識を最初にお客様と共有できたことが、遠回りに見えて最短の道になっています。

活用を広げるほど重要になるのが、ルールと統制の設計です。同社では「使わせない」ための規制ではなく、「どの部署でも安全に使い始められる標準設定」をあらかじめ用意するアプローチを採っています。部署ごとの業務特性に応じて利用機能を段階分けし、機密情報・個人情報の取り扱いルールをAIツール側の設定にも落とし込む。「人への注意喚起」と「仕組みでの担保」の二段構えです。
生成AIの統制は「性悪説で縛る」か「野放しにする」かの二択になりがちですが、同社の「安全な初期値を配る」という発想は、これから全社展開を考える企業にとって大いに参考になるはずです。

取り組みから数か月、最も大きな変化は数字よりも先に「人」に現れています。管理部門のある若手の方は、生成AIを使って膨大なデータから分析資料を自ら作成し、幹部が集まる会議で自ら発表するまでになりました。「道具が変わると、仕事への向き合い方が変わる」。生成AI活用の本当の価値は、業務時間の削減だけでなく、こうした一人ひとりの変化の積み重ねにあると実感しています。

平田機工様の取り組みに共通するのは、「AIを入れること」を目的にしていない点です。課題の見える化から始め、動くもので確かめ、安全に使える環境を整え、現場の人が自分の手で使いこなしていく。mimuはその過程を伴走する立場です。生成AI活用にお悩みの企業の方は、ぜひ「自走する組織づくり」という視点から自社の取り組みを見直してみてください。
(株式会社mimu 代表取締役 森田幸輔)
株式会社mimuでは、今回ご紹介したような週1回の定例による生成AI顧問・伴走支援を行っています。「導入したが定着しない」「どこから手をつけるべきか分からない」といったお悩みがあれば、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。