
2026年9月18日、くまもとクロスイノベーション協議会の生成AIセミナー「対話するAIから、作業するAIへ!」で、第1部の講師を務めました。この記事では、第1部でお話しした内容を、当日参加できなかった方にも読めるようにまとめ直しています。第3部のワークショップ資料は配布資料の記事からダウンロードできます。
いちばん持ち帰ってほしいことは1つです。AIは「対話する」段階から「作業する」段階に入りました。2025年までのAIは質問に答える相手でしたが、2026年のAIは仕事を代わりにやる相手です。
ChatGPTに代表される「対話するAI」は、相談できる先輩です。質問すると答えを返し、下書き・要約・翻訳が得意です。ただし結果はコピペして自分で使う必要があり、あなたのパソコンの中では何も起きません。
Claude Codeに代表される「作業するAI」は、頼めばやってくれる部下です。指示すると仕事を最後までやり、ファイルを読む・作る・動かす・ブラウザを操作する、を自分でこなします。結果は成果物として出てきて、途中で自分で確かめてやり直します。
定義はいろいろありますが、私たちはこう呼んでいます。AIエージェント=パソコンを操作するAI。やることは次の6つです。

当日は、冒頭で60秒の会社紹介動画を流しました。「会社紹介の動画を60秒で作って」と日本語で入力しただけで、台本・デザイン・アニメーション・書き出しまでAIエージェントが実行したものです。身近なところでは、こんな使い方をしています。
社員2人の会社ですが、社内には12の「部署」があり、それぞれに担当AIがいます。秘書室、リサーチ、開発、営業、経理、マーケティング、クリエイティブ、総務・法務など、名前を付けて仕事を頼みます。さらに、私が寝ている間に毎晩・毎朝動く無人のAI社員が15体います。送信前に宛名と社名を照合する係、未入金を毎朝点検する係、見積期限や契約更新の期日を先読みする係などです。AIが下書きを作り、決裁箱に届き、私は朝1通に「OK/修正/スキップ」と返すだけです。
中でも力を入れているのがリサーチAIです。私たちの商売は新しい情報が命なので、「Claude Codeの活用事例を調べて」の一言で、Xの投稿とWeb記事を横断して集め、出典を確かめ、「結論→なぜ重要か→要点」の順に1ページにまとめるところまでAIにやらせています。AI同士を組み合わせ、Claude Codeが司令塔、別のAIが目になる構成です。
2026年8月18日から9月17日までの30日間に、mimuが作ったものをファイルの更新履歴と開発ログから数えました。
| 種類 | 30日間の量 |
|---|---|
| 文書(議事録・要件定義・提案) | 524本 |
| HTML資料・アプリ | 288本 |
| スライド | 387枚 |
| プログラム | 約2万行 |
| Excel・Word | 180本 |
| 画像・動画 | 188枚・4本 |
| AIの作業セッション | 1,540本(1日約50本) |
これを慣れた人がAIなしで作った場合の工数を、常識的な単価で見積もると合計約4,300時間。1人の月間労働160時間で割ると約27人月です。厳しく見ても13人分、甘く見れば30人を超えます。差分の約25人分をAIエージェントが働き、人がやっているのは「指示する」と「確認する」だけ。だから2人が残っています。
生成AI顧問として伴走している製造業のお客様で、月次の予実集計を変えた例があります。以前は各部門のExcelをコピペで集約し、関数を直し、報告資料に転記していました。集計と転記に毎月何日もかかり、数字が変わるたびにやり直し、担当者が休むと止まる状態です。
いまは、Excelをなくしてダッシュボードにしています。元データを置けばAIが集計・更新し、経営陣は画面を開くだけです。現場の担当者がAIと約1週間で内製し、引き継ぎ書までAIと作ったので、人が替わっても回ります。Excelのバケツリレーはやめて、AIが更新しやすい形に置き換える。これが「作業するAI」の典型的な使い方です。
難しいのは技術ではなく、3と4の「考え直す」ところです。順に補足します。
2026年9月時点で「作業するAI」の本命は、Claude CodeかChatGPTのCodexの2つです。私は「会社で選ぶ」ことを勧めています。OpenAIか、Anthropicか、Googleか、xAIか。mimuは安全面を重視してAnthropicのClaudeに重きを置いており、クライアントも基本はClaude Codeで進めています。半年後には変わっているかもしれませんが、「会社で選ぶ」という軸は変わりません。
もう1つ大事なのがコネクターです。エージェントだけでは何も触れません。メールを読ませたいならメールのコネクター、会計ソフトならAI連携できるもの、ファイルならGoogleドライブやBox。つなぐ先が多いほど、AIにできることの幅が広がります。
「業務の整理ができていない」という方ほど効く指示があります。まずこれを打ってみてください。
私のパソコンの中を確認して、
どういった業務をやっているかを推測してください。
推測した後に、私に一問一答形式でインタビューして
業務をヒアリングしてください。AIが先に推測して、質問してくれます。別の方法として、いつもの業務を画面録画で撮ってAIに渡し、「この業務を分析して」と頼むやり方もあります。手順書がなくてもAIが手順を書き起こし、どこに時間がかかっているかが見え、置き換える業務の候補が出てきます。最初の1つは、毎週・毎月くり返している業務からです。
よくある依頼が「このExcel集計を自動化して」です。しかしExcelは人が手でやるには最適な道具で、AIに人の手順をなぞらせると遅くて高くつきます。そもそもその集計は、誰が何のために見るのでしょうか。AIありきで考え直し、Excelをなくしてダッシュボードにする。経営陣は「見る・判断する」だけになります。自動化する前に、その業務は本当に必要かを一度疑ってください。
「マニュアル通りにExcelを集計して」は作業の層の指示です。動きますが賢くならず、意味のない作業を速くやるだけになりがちです。「経営陣に報告したい。この数字をどう見せる?」と目的の層で渡すと、AIは目的から逆算して見せ方や集め方まで提案してきます。指示は「作業」ではなく「目的」で渡します。
文面より要素です。この4つがあれば、日本語で頼むだけで動きます。
うまくいった指示は、その場で「スキル」にします。手順書として保存して名前で呼べるようにしておくと、「紹介状を書いて」の一言で同じ品質が出ます。担当者が替わってもコツが消えず、引き継ぎはスキルを渡すだけです。
失敗は全部、仕組みで防げるものでした。技術の限界ではなく、設計の問題です。
東大級の新人が今日入社したと思ってください。頭は良いけれど、会社のこと、お客さんのこと、先月何があったかは何も知りません。だから「教える」「型にする」「回して直す」。人を育てるのと同じです。柱は3つあります。

元ネタは、アンドレイ・カーパシー氏(元OpenAI/Tesla)が提唱した「LLM Wiki」の考え方です。資料を毎回検索させるのではなく、AI自身に整理されたWikiを書かせて育てさせます。mimuはこれを自社と顧問先で運用しています。
気合いで回すと3週間で止まります。見る人が決まっていないと誰も見ず、直す場所が指示文だと同じ失敗を繰り返し、止まる条件がないと壊れたまま動き続けます。「人が頑張る仕組み」ではなく「人が見るだけで回る仕組み」にします。

mimuでは、各AIが毎回「何をしたか・迷ったか」のレポートを残し、それを1体の「改善AI」が横断で読んで「ここを直すと良くなる」という提案にまとめます。提案は決裁箱に届き、人は朝1通で承認か差し戻しを返すだけ。承認分はAIが手順書とWikiに反映し、翌日からは直った状態で動きます。改善そのものをエージェントにするのが、育て方の到達点です。
うまくいかない会社は、AIに任せて見ません。何をしたか分からないまま結果だけ使い、間違いに気づくのがお客さんに出した後で、「やっぱりAIは使えない」で終わります。うまくいく会社は、AIに報告させて人が確認します。だからmimuは、指示する人と確認する人の2人が残っています。
第1部の締めは、孫正義氏がSoftBank World 2026の特別講演で経営者に語った言葉を引きました。「AIが仕事を奪うんじゃない。AIを使う企業に、仕事を奪われるんです」。社長の仕事は「AIだ、AIだ」と叫び続け、全業務をエージェント化せよと指示し、「やったのか」と毎日確かめること。この講演の内容は別の記事で詳しくまとめています。
作るのは、もう難しくありません。難しいのは「その業務は必要か」「目的はどの層か」を考え直すことで、それは経営者と現場にしかできない仕事です。対話するAIから、作業するAIへ。今日、AI社員を一人雇ってみてください。
株式会社mimuでは、今回の内容を自社に当てはめる伴走支援、AIエージェントの開発、社員向けの研修を行っています。第3部で使ったハンズオン教材とプロンプト集は配布資料の記事から無料でダウンロードできます。「何から始めるか」の段階のご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。